初期症状がほとんどない
糖尿病は発症しても初期の場合、自覚症状が見られません。
しかし高血糖状態が長期間続くと「のどが渇く」「尿量が増える」などの症状が現れます。
糖尿病とは
糖尿病とは、血糖値が高い状態が続く疾患です。暴飲暴食や肥満、運動不足などによって、インスリンの分泌や働きに障害が発生することで起こります。
高血糖が続くと全身の血管にダメージが蓄積されるため、あらゆる合併症が引き起こされます。
糖尿病の症状
初期でしたら自覚症状に乏しいですが、長期間血糖が高いままでいると、自覚症状が起こるようになります。
糖尿病の代表的な症状とは
- のどが渇く
- 尿の回数・量が多くなる
- 疲れやすくなる
- 水分を多くとる
- 体重が減る
- 手の痺れ
- ものが見えにくくなる
- 皮膚の痒み
- ちょっとした傷でも化膿しやすくなる
など
糖尿病は遺伝…?原因は?
糖尿病の原因には、大きく2つあります。1つは遺伝的要因、もう1つは環境的要因です。
遺伝的要因
糖尿病を患っている血縁者がいる方は、そうでない方よりも糖尿病を発症するリスクが高いと言われています。
生活習慣
暴飲暴食やストレス、肥満、運動不足、加齢などは、糖尿病の発症を引き起こす引き金になる要素です。
1型糖尿病と
2型糖尿病の違い
一型糖尿病
膵臓のインスリンを出す「β細胞(べーたさいぼう)」が壊されてしまう疾患です。インスリンがほとんど分泌されなくなることが多いため、インスリン製剤を使って補う必要があります。糖尿病患者全体の約5%がこれに該当します。
二型糖尿病
最も多くみられる糖尿病です。遺伝的要因と、環境的要因(生活習慣の悪化)から発症する糖尿病で、「生活習慣病」の一つとされています。
糖尿病が引き起こす
三大合併症~しめじ~
高血糖状態が続くと、全身の毛細血管や神経の障害が現れるようになります。中でも代表的なのが、糖尿病の「三大合併症」と呼ばれているものです。
「し」糖尿病神経障害
高血糖による神経細胞の変化と、動脈硬化による神経細胞への血流不足によって起こる、神経障害です。
「め」糖尿病網膜症
目の中にある網膜が障害を受けることで、視力が下がってしまう疾患です。
「じ」糖尿病腎症
腎臓の機能が衰えても、早期の段階でしたら自覚症状は現れません。しかし進行すると、身体の余分な水分・老廃物を尿として排出させる機能が下がってしまうため、「気分が悪い」「浮腫」などの症状が引き起こされます。
糖尿病の治療法
早期のうちから血糖コントロールを行うと、健康な方と同じ生活を送ることが可能です。健康診断などで異常を指摘された方は放置せず、当院までご相談ください。
食事療法
ご自身に合った適正エネルギー量を把握し、その範囲に合わせた食事を心がけていきましょう。また食物繊維には、食後の血糖値上昇を抑える効果や、血清コレステロールの増加を防ぐ効果があるので、積極的に摂ることをお勧めします
お食事のポイント
- 夜遅い時間帯での食事は避ける
- 栄養バランスを考えて摂取する
- 腹8分目を心がける
- 朝食、昼食、夕食は規則正しく食べる
- ゆっくり、よく噛んで食べる
注意するポイント
- 野菜は1日350gを目標に摂取しましょう
- 薄味にして、食塩の摂取量を抑えましょう。(男性7.5g/日、女性6.5g/日以内、高血圧もある方は6g未満/日)
- アルコールは1日25g(目安:缶ビール350ml 一本分)までにしましょう
- 肝疾患または重い合併症なども発症している方は、禁酒に努めましょう
1日の適正エネルギー摂取量を超えないよう、気を付けて食事を楽しみましょう。
一日の摂取エネルギー量の計算
摂取エネルギー量の目安=①標準体重×②身体活動量
- 標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
- 身体活動量(kcal/kg 標準体重)
25~30 軽労作(デスクワークが多い職業など)
30~35 普通の労作(立ち仕事が多い職業など)
35~ 重い労作(力仕事が多い職業など)
参考:日本糖尿病学会 編・著: 糖尿病治療ガイド2020-2021, p.48-49, 文光堂 2020より
運動療法
運動療法には、肥満の抑制効果があったりインスリンの働きを良くしたりする効果があります。
ただし運動療法だけではなく、食事療法も一緒に継続しながら行うようにしましょう。
運動療法による効果とは?
- 血中のブドウ糖が筋肉にとり込まれやすくなるため、血糖値が下がるようになる
- (2型糖尿病の場合)低下しているインスリンの働きが高くなる
- 摂取カロリーと消費カロリーのバランスが改善され、肥満予防になる
- 高血圧や脂質異常症の改善にも有効
- 加齢や運動不足による筋力低下、骨粗鬆症の予防に有効
- 関節や骨が丈夫になり、末梢血管も強くなり心肺機能が高まる
- 筋力・体力の増強に有効
- ストレスが解消できる
有酸素運動と筋肉トレーニングの組み合わせが大切
糖尿病の患者様には、歩行や水泳、ジョギングなどの有酸素運動の方が適しています。
どれくらい運動するべき?
1日に付き、160~240kcalほど消費することが望ましいと言われています。
ウォーキングの場合、目安は1回につき15~30分間、1日2回行うようにしましょう。少なくとも一週間に3日以上はウォーキングすることをお勧めします。
有酸素運動の例
- ウォーキング
- 軽いジョギング
- 水泳
- 自転車のサイクリング
- 階段の昇り降り
有酸素運動の例
- スクワット
- マシンを使用したトレーニング
- ダンベルなど
運動するときのポイント
- ウォーミングアップと整理運動は欠かさず行いましょう
- 軽い運動から始め、少しずつ運動量を増やしましょう
- その日の体調に合わせた運動を心がけましょう
- 継続することが大事ですので、続けやすい運動を行いましょう
- 時々でもよいので、運動する前・した後の血糖値や尿糖を測りましょう
薬物療法
食事療法と運動療法を続けても良好な血糖コントロールが難しい場合は、合併症・進行リスクを抑えるために、薬物療法も行います。
1型糖尿病の場合
インスリン療法が必須です。
2型糖尿病の場合
食事療法と運動療法を続けても血糖コントロールが難しい場合は、容態に合った経口血糖降下薬や、インスリン注射、GLP-1受容体作動薬を処方します。
インスリン療法
インスリン製剤を直接補充することで、血糖値を下げる治療方法です。
製剤には様々な種類があり、患者様の容態に合ったものを処方します。
経口血糖降下薬
容態や合併症の有無などに合わせて処方します。
インスリン製剤やGLP-1受容体作動薬と併用することもあります。
インスリン分泌を増やす作用がある薬
◆スルホニル尿素(SU)薬
インスリン分泌を促します。
◆効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)
インスリン分泌を早く促すことで、食後の高血糖を改善させます。
◆DPP-4阻害薬
GLP-1とGIPの分解抑制によって、血糖依存性のインスリン分泌促進効果とグルカゴン分泌抑制効果を発揮させる薬です。
◆GLP-1受容体作動薬
DPP-4阻害薬による分解を受けずにGLP-1作用を増強させ、血糖依存性のインスリン分泌促進効果とグルカゴン分泌抑制効果を発揮させる薬です。
インスリンの作用をよくする薬
◆ビグアナイド薬
肝臓での糖産生を抑えます。
◆チアゾリジン薬
骨格筋・肝臓でのインスリン抵抗性を改善させます。
糖の吸収と排泄を調整する薬
◆α-グルコシダーゼ阻害薬
腸管での炭水化物の吸収分解を遅らせ、食後の血糖上昇を抑えていきます。
◆SGLT2阻害薬
腎臓のブドウ糖再吸収を阻害し、尿中のブドウ糖の排泄を促します。